簡裁訴訟代理

簡裁訴訟代理のイメージ図

簡裁代理権とは、簡易裁判所が取り扱う範囲における民事訴訟事務の権限です。そのベースラインは、訴訟目的となる対象の価額140万円以下となります。法務大臣の認定を受けた認定司法書士は、司法書士法に基づき、簡裁訴訟代理等関係業務を行うことが可能です。

 

簡易訴訟代理等関係業務とは、具体的に以下のものを指します。


民事訴訟代理

簡易裁判所において取り扱うことができる民事事件(訴訟の目的となる物の価額が140万円を超えない請求事件)等について、代理業務を行うことができます。

 


訴え提起前の和解(即決和解)手続き

訴え提起前の和解手続の流れ

  1. 各種民事紛争の発生
    訴え提起前の和解は,裁判上の和解の一種で,民事上の争いのある当事者が,判決を求める訴訟を提起する前に,簡易裁判所に和解の申立てをし,紛争を解決する手続です。
    当事者間に合意があり,かつ,裁判所がその合意を相当と認めた場合に和解が成立し,合意内容が和解調書に記載されることにより,確定判決と同一の効力を有することになります(民訴法267)。

  2. 当事者間の事前の話し合い和解条項(案)作成
    訴え提起前の和解の申立てから和解期日指定まで平均1か月程度を要します。したがって,建物等の明渡し,金銭の支払を要する和解については,この点を考慮に入れて明渡日や支払日を検討する必要があります。

  3. 訴え提起前の和解の申立て
    訴え提起前の和解は「民事上の争い」がある場合に申立てをすることができるものですから,申立書にこの点を必ず記載します。

  4. 申立書審査
    申立てがあると,審査の結果,書類の追完,和解条項の修正をお願いされることがあります。
    修正等が完了すると,和解期日の指定手続に入ります。和解期日を指定する際には裁判所が希望日をお聞きします。
    裁判所に出頭できる日を相手方と打ち合わせ,裁判所に希望日(連絡日から14日以上先の日)を連絡します。
    これは相手方に期日呼出状等を送付する必要があるためです。

  5. 期日呼出
    修正された和解条項は,期日呼出状と共に相手方に送付し,和解調書正本にも使用します。

  6. 和解期日
    和解期日当日,当事者双方が和解条項について合意し,かつ,裁判所が相当と認めた場合に和解が成立し,和解調書が作成されることになります。和解調書正本は,原則,和解期日当日に双方に交付送達されます。

 


支払督促手続き

「支払督促」は、貸したり立て替えたりしたお金や家賃、賃金などを相手方が支払わない場合に、申立人側の申立てのみに基づいて、簡易裁判所の書記官が相手方に支払いを命じる略式の手続です。紛争の対象となっている金額にかかわりなく、下記のような金銭の支払いを求める場合に利用できます。

 

<支払督促の対象の例>

以下のような金銭に関する未払い、未返還などが、支払督促手続の対象になります。

貸金、立替金 / 売買代金 / 給料、報酬 / 請負代金、修理代金 /  家賃、地代 / 敷金、保証金

 

支払督促は、次のような特徴があります。 

  • 裁判所に出向く必要はありません
    書類審査のみで行われる手続で、利用者が訴訟などのように裁判所に出向いたり、証拠を提出したりする必要がありません。
  • 裁判所に納める手数料が、訴訟の半分になります
    支払督促の手数料は、訴訟の半分です。例えば、100万円の支払いを求める場合、裁判所に納める手数料は、民事訴訟では10,000円ですが、支払督促では半分の5,000円になります。
  • 申立人の申立てのみに基づいて、簡易裁判所の書記官が金銭の支払いを命じます
    申立人の申立てに基づいて、裁判所書記官がその内容を審査し、相手方の言い分を聞かないで金銭の支払いを命じる「支払督促」を発付します。
  • 「仮執行宣言付支払督促」により強制執行を申し立てられます
    発付された支払督促を送っても、相手方がお金を支払わず、異議申立てもしない場合、申立人は支払督促に対して仮執行宣言を発付してもらい、強制執行を申し立てることができます。 

申立人にとっては、支払督促の手続は、詳細な証拠集めが不要で支払督促申立書に必要事項を記入して簡易裁判所に提出すれば済むなど、民事訴訟や少額訴訟、民事調停に比べて簡単に行うことができます。

一方、相手方は、支払督促に納得できない場合は異議申立てをすることができます。

 

このような特徴から支払督促は、督促の対象となる金銭の額や支払時期、契約の有無などについて、申立人と相手方に相違がない場合に向く手続です。例えば申立人は「これこれのお金を何月何日までに支払われる約束だったが、まだ支払われていない」とし、相手方は「確かにそのとおりで、まだ払っていない」というような場合です。ですので、相手方が反論する可能性が高い場合は、民事訴訟や民事調停など、支払督促以外の手続を検討することが考えられます。

また、支払督促は書類を郵送して行われるため、相手方の住所が判明している必要があります。相手方の住所が分からない場合は、支払督促の手続をとることはできません。

 

支払督促手続は、次のような流れで行われます。

 

申立人:支払督促申立書に必要事項を記入して、相手方の住所地の簡易裁判所に提出する

 

支払督促の申立ては、申立書に必要事項を記入し、手数料と相手方に書類を送るための郵便切手などを添えて、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に直接または郵送で提出します。申立人が法人の場合は、「登記事項証明書(1通)」が必要となります。

 


証拠保全手続き

証拠保全が必要なケース

証拠保全をする必要があるのは、何らかの理由で証拠を集められないときです。

例えば、過労死の訴訟の場合は本人が死亡しており証拠を集めにくいので、企業に残っているタイムカード等をコピーするために証拠保全が必要になることもあります。

証拠保全の根拠となるのは民事訴訟法234条です。

 


民事保全手続き

  • 民事保全手続の意義
    債権者(民事保全の申立てをする人は債権者と呼ばれます。)が勝訴判決を得て強制執行を行うまでには一定の時間を要します。しかしながら,勝訴判決を得るまでの間に債務者(民事保全の申立てがされた人は債務者と呼ばれます。)に財産を処分されてしまっては,勝訴判決が無意味になりかねません。そのため,債務者の財産を一時的に処分できないようにしておく手続が民事保全手続です


  • 民事保全手続の種類
    民事保全手続は,大きく分けて仮差押え(民事保全法20条),係争物に関する仮処分(民事保全法23条1項),仮の地位に関する仮処分(民事保全法23条2項)に分類することができます。


    仮差押えは,金銭債権について将来の強制執行を保全するために債務者の財産を処分できないようにすることを目的とする手続です。

    仮差押えと同様に将来の強制執行を保全するもので特定物の引渡請求権等を保全の目的とするのが係争物に関する仮処分です。例えば,将来の不動産所有権移転登記請求権を保全するために登記名義を現状のままに固定しておくこと(処分禁止仮処分),将来の建物の明渡請求権を保全するために居住者を現状のままに固定しておくこと(占有移転禁止仮処分)を求めることができます。

    これに対し,仮の地位を定める仮処分とは,争いがある権利関係について,現在債権者に生じる著しい損害又は急迫な危険を避けるために暫定的な措置をすることを求める仮処分です。例えば,交通事故の被害者が事故のために働けず,生活に困窮している場合に,被害者は,加害者に対して,毎月一定の金銭の給付を求めることができます

 


民事調停手続き

調停は,裁判のように勝ち負けを決めるのではなく,話合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続です。

調停手続では,一般市民から選ばれた 調停委員 が,裁判官とともに,紛争の解決に当たっています。

原則として,相手方の住所のある地区の裁判を受け持つ簡易裁判所に申し立てます。

ただし,事件の種類によっては例外もあります。

 


少額訴訟債権執行手続きおよび裁判外の和解の各手続きについて代理する業務


仲裁手続きおよび筆界特定手続きについて代理する業務

簡易訴訟代理等関係業務の分かりやすい例といえば、訴額140万円以下の過払い金請求訴訟でしょう。

貸金業法の改正にともない、グレーゾーン金利で取り立てられた利息の返還を求める訴訟が各地で起きていますが、返還請求額が140万円以下の場合、認定司法書士による訴訟事務代理が可能。

反対にそれを超える案件の代理は非弁行為とみなされ、法律により罰せられます。

認定司法書士のみ、簡裁訴訟代理権の行使が認められます。

当事務所は、認定司法書士事務所です。